「研究活動スタート支援」は、研究機関に採用されたばかりの研究者や、育児休業等から復帰した研究者が新たな研究を開始するための支援制度です。
今回採択された研究課題は、「知的障害特別支援学校高等部の理科授業におけるICT活用型探究モデルの開発」。
岩井講師に、この研究を始めた理由や、その先に描く教育の未来、そして学生・高校生へのメッセージを詳しく伺いました。

この研究を始めたきっかけを聞かせてください。
特別支援学校で授業をしてきた中で、ずっと考えてきたことがあります。それは、「知的障害のある生徒にとっての『わかる授業』とは何だろう」ということです。教師が分かりやすく説明することも大切です。しかし、それだけではなく、生徒自身が「どうなるのかな」と予想したり、自分で確かめたり、「さっきとは違う」と気付いたりする経験も大切だと感じてきました。理科では、実際に物を見たり、触れたり、変化を確かめたりできます。だからこそ、生徒自身が考える学習をつくることができます。一方で、観察したことを覚えておくこと、複数の結果を比べること、自分の考えを言葉で表現することなどに難しさがある生徒もいます。
そこで着目したのがICTです。
写真に残せば、もう一度見ることができます。動画なら、変化を繰り返し確認できます。二つの写真を並べれば、違いがわかりやすくなります。ICTを「教えるための道具」ではなく、「生徒が自分で考えるための道具」にできないか。
それが、この研究の出発点です。
この研究からどのようなことを導き出したいと考えていますか?
研究で目指しているのは、「タブレットを使った理科授業」を増やすことではありません。大切にしているのは、生徒が、
「なぜだろう」と思う。
「こうなるかもしれない」と予想する。
実際に観察・実験してみる。
結果を記録する。
違いや共通点を見つける。
そして、自分なりに考え、表現する。
という学びの過程に、できるだけ自分自身で参加することです。その過程のどこにICTがあると学びやすくなるのか、どのような教師の支援と組み合わせればよいのかを明らかにしていきます。
今回の研究では、こうした知見を「ICT活用型探究モデル」として整理し、教材やワークシート、授業事例、活用ガイドとして教育現場に還元することを目指しています。

その研究の先に、どんな教育を描いていますか?
この研究で考えたいのは、理科やICTについてだけではありません。根底にあるのは、
「その子にとって難しいから、学ぶ内容を減らす」のではなく、
「どうすれば、その子も学びの過程に参加できるのか」を考えることです。
見る方法を変える。
記録する方法を変える。
考えを表す方法を増やす。
学ぶ人を変えようとするのではなく、学び方や環境の側を工夫する。
今回の研究から得られた成果を特別支援学校の授業づくりだけにとどめず、教員養成や現職教員の研修にもつなげていきたいと考えています。一人ひとりの「知りたい」「伝えたい」が大切にされる授業を増やしていくことが、この研究の先にある目標です。

仙台大学で学ぶ学生に期待することは?
大学で学んでいると、「正しい支援方法を覚えなければ」と考えることがあるかもしれません。しかし、教育には、最初から一つの正解が用意されているわけではありません。目の前の子どもを見て、
「なぜ、ここで困っているのだろう」
「教材を変えたらどうだろう」
「別の伝え方なら分かるかもしれない」
と考えることが、支援や授業づくりの始まりです。
そして、その「なぜ?」を調べ、試し、確かめていくと、それは研究にもなります。皆さんにも、大学で学んだ知識を覚えるだけではなく、目の前の人から問いを見つけ、自分なりの方法で確かめていくことを大切にしてほしいと思います。
高校生・受験生の皆さんへメッセージをお願いします。
「研究」と聞くと、少し難しいものに感じるかもしれません。でも、その始まりは意外と身近です。「どうして同じ教え方でも、分かりやすい人と分かりにくい人がいるんだろう」
「ICTやAIを使ったら、学び方はどう変わるんだろう」
「スポーツ、教育、福祉を組み合わせると、どんなことができるんだろう」
そんな疑問も、立派な研究の入口です。仙台大学には、スポーツだけでなく、教育、福祉、健康、心理、ICTなど、さまざまな視点から「人」について考える学びがあります。
大学とは、すでにある答えを覚えるだけの場所ではありません。自分だけの「なぜ?」を見つけ、それを誰かのための「わかった」へ変えていく場所でもあります。皆さんが仙台大学で、自分自身の問いに出会えることを楽しみにしています。
【教員紹介】岩井祐一講師
※健康福祉学科に関するニュースやコラムは「#健康福祉学科」でまとめてご覧になれます。
