2026/04/30

子どもの「心の声」を聞き漏らさないために―現代のいじめの背景と、私たち大人に託された使命―

 いじめは、どこにでも起こりうる身近な問題です。何気ない言葉や態度の積み重ねが、誰かの心に深い傷を残すこともあります。学校や職場、さらにはSNS上にも広がるいじめの実態とその背景、そして課題について、仙台市いじめ防止対策等検証会議会長であり、本学健康福祉学科の氏家靖浩教授にお話を伺いました。
 

いじめの背景

近年のいじめの傾向について

 近年のいじめは、「加害者の悪意」ではなく「被害者が不快と感じた時点で成立する」という考え方に変化しています。これはハラスメントと同様の捉え方であり、「いじめっ子」という悪者が必ずいるという視点にはとらわれていません。
 この変化により、子どもたちは声を上げやすくなり、特に低学年ほどその傾向が顕著に見られます。その結果、いじめとして認知された件数は増加していますが、これは子どもが弱くなったということではなく、声を上げることができる社会へと変化してきた証でもあります。
 

未然に防ぐには

教員として、会長としての考え

 いじめが深刻化する前に食い止める鍵は、大人の「気づき」にあります。
 いつもより口数が少ない、イライラしている、どこか様子が違う。そうした小さな変化に気づいたとき、「いじめる側」「いじめられる側」と区別する前に、まずは「何かあったの?」と声をかけることが大切です。
 子どもの弱さに目を向けるのではなく、その心の揺れに寄り添い、共に歩もうとする姿勢こそが、今を生きる大人たちに求められています。
 

社会の役割

「見守りの網」を社会全体で広げる

 現在、社会に求められているのは、子どもを社会全体で見守る姿勢です。
 学校だけでなく、家庭や地域においても子どもの変化に気づき、早い段階で声をかけることが重要です。近年は学校の対応力が高まっている一方で、児童館やスポーツ団体など、学校外での人間関係にも目を向ける必要があります。
 家庭・学校・地域が連携し、情報共有を密にしながら、多面的に子どもを支える体制づくりが求められています。
 

教員を目指す学生へ

未来の教育者へのメッセージ

 教員を目指す皆さんに求められるのは、いじめを自分の価値観で裁くのではなく、子どもの立場に立ち、小さな心の動きに敏感に向き合う姿勢です。
 現代はいじめは子ども同士の問題だからといって子ども同士で解決させるだけではなく、大人が責任を持って関わり、支えていくことが不可欠な時代です。
 本学では、スポーツや部活動を通じて「人を見る力」や「対話する力」を養うとともに、教職員と学生が近い距離で向き合う環境を整えています。この中で培われる「人間味」こそが、現場で子どもを支える大きな力になります。
 実践的な力を備え、子どもの心に寄り添える存在となることを期待しています。

・プロフィール

氏家靖浩 教授

仙台大学体育学部健康福祉学科/教養教育部長補佐
専門領域:精神保健、障害者心理、教育相談、野球のメンタルトレーニング
資格:公認心理師、精神保健福祉士、学校心理士
社会的役割:仙台市いじめ防止等対策検証会議会長
部活動:軟式野球部 部長、アルティメット部 部長
業務:学生相談室 相談員
最近の著書:「学校心理学事典」(丸善出版)
学校現場で実践に役立つヒントを盛り込んだ事典に分担執筆しました。
趣味:プロ野球千葉ロッテマリーンズファン
 

仙台市の郡市長へ令和7年度いじめ対策検証の報告書を提出する様子(左は氏家靖浩教授)=写真提供:仙台市

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