アナリストとは、試合や練習で得られる膨大なデータを分析し、そこから導き出した客観的な根拠をもとに、監督やコーチの戦略・戦術に役立てたり、選手のパフォーマンス向上を科学的にサポートしたりする専門職だ。近年ニーズは高まっているものの、採用枠は狭き門。その中で、プロ野球球団のアナリストとしての道を切り拓いたのが五十畑(いかはた)洸弥さんである。人知れず努力を重ねてきたからこそ掴み取った、まさにビッグチャンスと言えるだろう。
アナリストをめざす理想的な環境
「少年野球の指導者だった父の影響で、自然に野球を始めました」と語る五十畑さん。スポーツ少年団を経て、中学からはクラブチーム「小山ボーイズ」に所属した。見えないところでコツコツと努力を積み重ねるタイプだったようで、「小柄な分、足で稼げるように速く走る練習をしていました」と振り返る。転機となったのは、進学した強豪昌平高校での野球部監督との出会いだった。監督は、ID(データ)野球で知られ、プロ野球界において長年監督を務めた故・野村克也氏から指導を受けた経験を持つ人物。その頃すでに「自分は選手としてよりも、支える側の方が向いているのでは」と考え始めていた五十畑さんが「アナリストをめざしたい」と相談すると、勧められたのが仙台大学だった。監督と本学硬式野球部・森本吉謙監督との交流もあり、直接対面した際に「200人もの選手がいる中で、学生コーチやアナリストの存在がいかに重要か」を語ってくれたという。
さらに、スポーツ情報マスメディア学科では、アナリストになるための実践的な学びができることを知り、「学んだことをグラウンドですぐに活かせる。一挙両得の環境」と感じ、仙台大学への進学を決意した。
大切にしてきた選手との信頼関係づくり
入学後は硬式野球部に所属し、学生コーチとして活動を開始。授業では、春高バレーのデータ分析なども経験し、「さまざまな競技のデータを扱う中で、野球に活かせる視点も多く、非常に勉強になりました」と、アナリストの醍醐味を実感したという。そんなある日、硬式野球部のコーチから「アナリストをやってみないか?」と声をかけられた。願ってもないチャンスに「ぜひやらせてください」と即答し、正式にアナリストとしての役割を担うことになった。最も心を砕いたのは、選手とのコミュニケーションだ。「データ作成に追われて選手との会話が疎かになると、一番大事な信頼関係が薄れてしまう。信頼がなければ、どんなデータも信じてもらえません」。

チームの勝利のために常にベストを尽くす
最も印象に残っている試合は、2023年6月の全日本大学野球選手権。桐蔭横浜大学(神奈川)との一戦で、延長10回の末、4―1で勝利を収めた試合だ。相手は、絶対的エース古謝樹投手(現東北楽天ゴールデンイーグルス)。「その試合で僕が用意した対戦相手の分析データが役に立ったと、みんなから『ありがとう』と言ってもらえた瞬間が、今でも脳裏に焼きついています」。データの凄さも怖さも、誰よりも熟知している五十畑さんは「選手のコンディションや環境、その時々の状況は刻々と変わる。だからデータは決して絶対ではありません。それでも、僕は自分の役割に対して常にベストを尽くすだけです」と語る。その表情は、プロの世界へ踏み出す覚悟に満ちていた。

ー 五十畑 洸弥(いかはた こうや)
スポーツ情報マスメディア学科4年
硬式野球部 埼玉・昌平高校出身
令和8年4月よりプロ野球球団のアナリストとして踏み出す