2025/10/14

シリーズ:プロ選手を支える栄養士の仕事④ 「未来のトップアスリートを支える」—仙台大学スポーツ栄養学科卒・菅原麻莉助手に聞く—

 現在、仙台大学附属明成高校男子バスケットボール部の栄養サポートを担う菅原助手。仙台大学スポーツ栄養学科での学びを土台に、プロ球団や高校現場での経験を積み重ねてきました。選手の成長を食の面から支える活動とはどのようなものなのか。そして、スポーツ栄養士という仕事の魅力とは―。
 

仙台大明成男子バスケットボール部で、栄養サポートを担当する菅原助手。

 

明成バスケットボール部を支える日々

 仙台大学助手として勤務する傍ら、2024年から管理栄養士として仙台大学附属明成高校の男子バスケットボール部で栄養面のサポートをしています。明成バスケットボール部は、全国屈指の強豪校として知られ、今年のインターハイでは第3位の成績を収めました。
 現在は、寮での食事メニューの作成・調整を中心に、調理師と相談しながら献立を工夫しています。練習量が多く、夏場は食欲が落ちる生徒もいるため、栄養だけでなく食べやすさも意識。160㎝台の選手から2m近い選手まで幅広い体格に合わせて、ご飯の量を体重別に調整しています。
 さらに毎週木曜日には、食文化創志科の生徒が調理した「テーマ食」を導入。疲労回復や免疫力向上などをテーマに、未来の栄養士を目指す高校生と一緒に献立を考えています。
 

仙台大明成男女バスケットボール部に対して、食事や栄養の重要性について説明する様子

 

仙台大明成高校食文化創志科と連携し、アスリート向けに考案された「アスリート飯」

 

大学時代の学びが基盤に

 私は2016年度にスポーツ栄養学科を卒業しました。在学中はスポーツ栄養研究会に所属し、水泳部の栄養サポートを担当。授業で学んだ知識を、実際の部活動支援で活用できた経験が、現在の活動につながっています。
 特に「どうすれば選手に伝わるか」を意識した資料作成や声かけ、傾聴の姿勢は、学生時代の大きな学びでした。現在は後輩学生に向けて、実際の栄養サポート事例を基にケーススタディを行い、学びをつなげています。
 

プロ球団で学んだ“リアル”な栄養サポート

 仙台89ersやマイナビ仙台レディースといったプロ現場で活動していた頃、栄養士として多くの気づきを得ました。プロ選手は既に自分なりの食習慣を確立しており、食生活を大きく変えるのは容易ではありません。しかし帯同を通じて、競技特性やコンディション調整の知識を深め、実践力を磨くことができました。
 この経験から、高校生や成長期の段階での栄養教育がいかに重要かを痛感しました。今は明成バスケットボール部でのサポートに加え、未来の選手生活を見据えた栄養教育を意識しています。
 

マイナビ仙台レディースの選手に向けて、栄養セミナーを実施する様子(2020-21SEASON当時)

 

地域の中学生と共に学ぶ「スポーツ栄養教室」

 昨年からは、地域の中学生を対象としたスポーツ栄養教室もスタートしました。これは仙台大学のS&Cコーチによるトレーニング教室と連携し、体力向上と栄養教育を同時に行う取り組みです。
 私自身も2歳と3歳の子どもを育てる親として、子どもたちの健やかな成長を支える活動に強い思いを持っています。この取り組みを通じて、地域に根ざした新しいスポーツ栄養の形を広めていきたいと考えています。
 

高校生へのメッセージ

 進路に迷ったときは、まず自分が「やってみたい」「関心がある」と思えることを大切にしてください。私自身、スポーツと食に興味を持ち、それを学べる場として仙台大学スポーツ栄養学科を選びました。その選択が、いま多くの現場での経験につながっています。
 学びの場で得られるのは知識だけではありません。仲間や先生との出会い、部活動や研究会での経験が、自分の考え方や視野を大きく広げてくれます。そうした積み重ねが、将来の仕事や生き方を形づくっていくのだと思います。
 「スポーツ」「食」「栄養」という言葉に少しでも心が動いたら、まずは本を読んでみる、講演を聞いてみる、大学のイベントに参加してみるなど、できることから一歩踏み出してみてください。その一歩が、自分らしい進路を見つけるきっかけになるはずです。


 
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