この歴史的勝利に大きく貢献したのが、本学硬式野球部の平川蓮外野手(体育学科4年)と佐藤幻瑛投手(体育学科3年)である。ともに代表の主力として堂々たるプレーを披露し、国際舞台で確かな存在感を放った。
日本代表のコーチとしてチームに帯同した本学の森本吉謙監督にもご登場いただき、選手たちの活躍や、大会を通じて感じた手応え・成長について振り返ってもらった。

日米大学野球を戦い抜いた仙台大の2人。左から平川蓮、佐藤幻瑛。
「国際舞台で得た“成長の手応え”と“新たな課題”」
平川蓮(体育学科4年)
Q. 初の国際試合で、最も印象に残ったプレーや瞬間は?A. 第3戦、2-0で日本がリードしていた8回表の守備で、レフトオーバーになりそうな打球を背走キャッチしたプレーです。もし抜けていれば同点に追いつかれていた場面で、日本代表の堀井監督にも「大きなプレーだった」と評価していただき、自信につながりました。(DRAMATIC BASEBALL 2025 Xより:https://x.com/ntv_baseball/status/1943619057594368306?s=61)
また、地元・北海道のエスコンフィールドで家族や友人が見守る中、ライト前ヒットで打点をあげられたことも嬉しい思い出です。
Q. アメリカ選手との対戦を通じて、自分のプレーがどこまで通用すると感じましたか?
A. 左打席ではある程度通用しましたが、右打席ではデータを取られ、自分の苦手なコースを攻められました。分かっていても打てなかったのは悔しく、対応力の不足を痛感しました。また、守備と走塁でも判断ミスや送球ミスがあり、技術以前に意識の甘さが課題だと感じました。
Q. 今回の経験を、今後の大学のリーグ戦や将来の目標にどう活かしていきたいですか?
A. 大学野球の“最高峰”を肌で感じ、各選手の高い意識や日常の振る舞いから学ぶことが多くありました。この経験を仙台大に持ち帰り、自分が率先して行動で示し、幻瑛とともにチームをもう一段上の集団へと導けるよう頑張ります。
Q. 現在取り組んでいる研究や、競技生活を支える日常の工夫について教えてください。
A. 卒業研究では「外野手が内野手につなぐ送球の高さと速さ」に関するデータ分析を進めており、現在はまとめの段階です。また、2年時に学んだ「スポーツ栄養学」をきっかけに、食事と栄養への意識が高まりました。体重管理とコンディション維持を大切にし、どんなに疲れていても3食きちんと食べ、プロテインも摂って調整しています。

鋭い打球を連発した平川蓮【写真提供:全日本大学野球連盟】
「真っ向勝負で掴んだ“自信”と“課題”」
佐藤幻瑛(体育学科3年)
Q. 日米大学野球で最も印象に残っている場面は?A. 第4戦、2死満塁でアメリカの注目打者と対戦した場面です。緊迫した状況でしたが、いつも通りの投球に集中して、特に緊張もなく臨めました。ツースリーから自分の武器であるストレートで三振を取れたのは、大きな自信になりました。(DRAMATIC BASEBALL 2025 Xより:https://x.com/ntv_baseball/status/1943617211383333148?s=61)
Q. 今回の登板を通じて見つかった課題や、意識するようになった点は?
A. 球速ばかり注目されがちですが、実際はボール先行になる場面もあり、内容としては反省点が多い登板でした。力んでコントロールを乱す場面もありました。それでも、ストレートでカウントを取れる場面が多く、自分の球が通用する手応えはありました。まだ3年生なので、来年も代表入りを目指して、この経験を糧に成長したいです。
Q. 今回の経験が、自分の成長やチームでの役割にどうつながると思いますか?
A. 大事な場面で起用され、しっかり抑えられたことで、メンタル面の成長を実感しています。もともと「スポーツ心理学」に興味があり、関連書籍を読む中で「言霊」やイメージの重要性を意識してきました。秋のリーグ戦では、どの役割でも結果を出して、チームの勝利に貢献したいと思います。

力強い直球で強打者に立ち向かった佐藤幻瑛【写真提供:全日本大学野球連盟】
「世界で得た“成功体験”をチームの力に変えるために」
森本吉謙監督
Q. 代表コーチとして臨んだ今回の日米大学野球。本学の2選手の活躍をどうご覧になりましたか?A. 平川も幻瑛も、この大舞台で短期間に大きく成長したと感じています。今後、この経験をどう活かすかは本人たち次第です。良い経験は“薬”にも“毒”にもなります。それを踏まえて、謙虚に、地に足をつけて成長してほしいと思います。
Q. 国際試合という非日常の舞台で、2人が得た最大の収穫は?
A. 平川は元々バッティングは良かったですが、今回、ハイレベルな投手に右でも左でも対応できたことは大きな成長でした。盗塁も決め、走塁にも自信がついたと思います。彼は吸収力の高い選手なので、今後も急成長していくと確信しています。
幻瑛に関しては、これまでのリーグ戦でも全日本選手権でも、そして今回のジャパンでも臆することなく、安定して高いパフォーマンスを発揮してくれました。今大会で投手コーチを務めさせていただきました私の立場からしても期待通りの活躍でした。
Q. この経験をチーム全体にどう還元していきたいとお考えですか?今後の本学硬式野球部の方向性も含めてお聞かせください。
A. 基本的な方針は変わりません。本学硬式野球部は常に“勝つために最善を尽くす”という姿勢を貫いています。今回の経験は彼らの血肉になっていますし、それが自然とチームに“にじみ出る形”で還元されると考えています。
平川も幻瑛も、ジャパンの選手としてはこれで一区切りです。これからは仙台大硬式野球部の選手として、チームをどう勝たせるかが軸になります。その上で、今回の経験をどう活かすかを本人たちが自覚して行動してくれると期待しています。
特に今回2人は日本代表として成功体験を得ましたが、学生の代表として、プレーだけでなく、日々の取り組みや振る舞いも含めて、『日本の学生野球の手本』としての姿勢を示して欲しいです。それが彼らの次の責任です。
経験は次へのステップへ
世界の舞台を経験した平川蓮、佐藤幻瑛、そしてそれを支えた森本監督。仙台大の選手たちにとって、この経験は間違いなく財産となるだろう。「ここからが本当の勝負」と語った3人は、すでに秋のリーグ戦、そして明治神宮大会を見据えていた。

平川蓮外野手

佐藤幻瑛投手